蔓延するエルハラ ありもしない種族に他者を重ねる心理とは

エルフハラスメントが社会問題に

魔族(DEBFY+)の人々などを「エルフではないか?」と疑い、エルフのようなふるまいを強要する”エルフハラスメント”が多発している。

被害者たちは「エルハラ被害者の会」を組織し、エルハラ撲滅に向けて活動を始める。

魔族や魔法使いに被害多数

エルハラ被害者の会には、天使・悪魔・羽無し妖精といった魔族の人々をはじめ、魔法使いも所属している。被害者はやせ型、美形、郊外出身、といった特徴を有する人が多い。なお、被害者の性格は様々だという。

エルハラ被害者の会の代表、トルキン・ナンテネ氏はエルフハラスメントの要因について、人間関係のトラブルではなく外見からの決めつけだと指摘する。

「若いころからエルフいじりはありましたが、私の内面に問題があるのだと思っていました。しかし被害者の会を組織して判明したのは、彼らは我々の内面になど興味は無いということです。エルフハラスメントは外見を理由とした嫌がらせ・いじめでした。」

加害者の属性は様々 知らずに加害者になるケースも

エルフハラスメントの被害者が似たような外見的特徴を持つのに対し、加害者の属性はさまざまであるという。

ハラスメント被害者のカウンセリングを担当してきたシラネーゼ氏は、加害者についてこのように説明した。

「エルハラの加害者の半数は明確な悪意を持って嫌がらせをしていますが、もう半数は悪意を認識していない人々です。

中には、好意的な気持ちを示すためにエルハラをしている人もいます。東魔法大陸や旧聖剣教国の一部では、エルフが誉め言葉として使われていた歴史があります。

褒めるつもりで”エルフのようだ”と言う人々がいるのは構いません。しかし、私たちはエルフではないのです。そのようにふるまうことを強要し、勝手にがっかりするのは止めてほしいです。」

「エルフはいません」言っても響かぬ加害者心理

現在、世界にはエルフを自称する人々は確認されていない。エルフ伝説の多くは泉書が元になっており、エルフは想像上の人々だと考えられている。エルフと同様、ホビット、オーク、ドワーフといった人類も存在しない。

エルハラ被害者なら一度は「エルフなんていない」と言ったことがあるだろう。しかし大抵、加害者の心には響かない。

「そんなことわかってるよ」「冗談の通じない奴め、本当にエルフじゃないか?」など、さらに嫌がらせを受けるケースが多数報告されている。

トルキン・ナンテネ氏とシラネーゼ氏は、「相手に”冗談だ”と言われても、自分が被害を受けたと感じた時は迷わず連絡してほしい」と呼び掛けている。また、ホビット、オーク、ドワーフと言われて嫌がらせを受けた人々の相談にも応じる構えだ。

ファンタジーと現実の区別つけて

エルフが冒険をし、恐ろしいオークが勇者と戦う。とかく想像の世界は楽しいものである。しかし想像は想像。ファンタジーと現実の区別はつけなくてはならない。

他者と対峙する時は空想の本を閉じ、目の前の存在している人と向きあおう。