一日一事 あの人を探して 「巡礼祭の変なオッサン」

ジンジョー探偵事務所。それは複雑に入り組んだ人間関係に鋭く切り込み、知られざる人と人のつながりを発見する探偵コラムニスト集団である。

10年前に巡礼祭で会った変なオッサンに会いたい

今回の依頼人は魔境帝国帝都にお住いのクリスさんだ。10年前に一度だけ出会った、強烈な印象のオッサンをお探しのようだ。

「ジンジョー所長、優秀な探偵の皆さん、はじめまして。いつも楽しく拝見しています。

さて、私の依頼は、10年前に神庭島の巡礼祭で出会った変なオッサンを探してほしいのです。

私は大学4年の夏に、卒業旅行を兼ねて神庭島の巡礼に参加しました。と言っても自然神の熱心な信奉者というわけではなく、うちに神棚があったかなあ?くらいのもので、全く巡礼祭のことは知らない若者でした。

神領と人領地の違いも分からない始末で、巡礼をあきらめかけていました。

そんな時、私たちに巡礼祭のイロハを教えてくれた変なオッサンがいました。恩人に向かって変なオッサンとは失礼極まりないですが、どう考えても、変なオッサンだったのです。

一緒に巡礼をした大学の友達のシリン君も、『あれは変なオッサンだったなぁ』と言っています。

とにかく変なオッサンだったので、会いに行ってみてください。」

以上が依頼文である。

以下は担当探偵、ジンジョー・ブランの報告である。

巡礼祭のスタッフで雷都ガイド

えー、最近の依頼は感動ものが多かったのですが、今回は「変なオッサン探し」ということで。うちの事務所らしい依頼がやってまいりましたね。

早速依頼人と帝都でおち合いまして、詳しい話を聞いてみました。どこがそんなに「変なオッサン」だったのか?

依頼人は普通の若者ですね。いい奴そうな兄ちゃんです。

探偵:変なオッサンを、探してほしい、ということ、で?

依頼人:はい、変なオッサンです

探偵:どこが、そんなに変なのぅ?

依頼人:見た目?

探偵:見た目?

気合の入った変わった髪と服?

依頼人:髪と服が、一段と気合入ってまして。

探偵:どんな髪と服だったの?

依頼人:髪は緑で

探偵:緑の髪の人なんかいっぱいおるがな

依頼人:でもでも!真ん中だけハゲてて…

探偵:ハゲは変ですか?

依頼人:でも、禿げ方がめっちゃ変だったんですよ

探偵:ほう、…服は?

依頼人:花柄のぴらぴらのシャツで、背中にごっついリュック背負ってました

探偵:花柄のぴらぴらシャツでごっついリュックのオッサン?…それはちょっと変なオッサンやね

依頼人:でしょ?

依頼人と神庭島へ

依頼人の話を聞くだけでは要領を得ませんので、実際に神庭島に行ってみることにしました。現在、神庭島は巡礼祭の真っただ中でございます。

依頼人は雷都で変なオッサンに会ったそうなので、観光もせず、雷都に直行いたしました。

雷都ガイドハウスに行ってみる

探偵:雷都の巡礼祭スタッフの詰め所にやってまいりました。

所長:どうもー

探偵:ここにね、10年前に変なオッサンのガイドがいたらしいんです。その方を探しに来たんですけれども。

所長:はあ

探偵:所長、どなたかご存じありませんか?

所長:いやー、心当たりと言われても、雷都は変なオッサンばっかりじゃんね。ちょっとそれだけでは絞れないというか。

探偵:雷都は変なオッサンばっかり?

所長:そうですよ。見てみりん、その辺歩いとるの変なオッサンばっかりだら?

ガイドハウスのドア越しに外を見渡してみました。ここ雷都、変な格好の人ばっかりですわ!オッサンだけでなく、老若男女、全員なんか変な格好してます。

探偵:依頼人、君が会ったのは、実はここでは普通のオッサンだったんと違う?

依頼人:いやいやいや、絶対一番変なオッサンでしたって!

探偵:え~?

変なオッサンと対面!

依頼人が変なオッサンの証言を譲らないので、所長にガイドの中で特別変なオッサンを呼んでいただきました。

探偵:さあ、雷都のガイドハウス所長さんが、一番変なオッサンを連れてきてくれました。この方です、どうぞ!

依頼人:おおーー!

依頼人は振り向きざまに、その人に気がついたようでした。変なオッサン探しは成功しました!

変なオッサン:こんにちハ!

変なオッサンは古参の妖怪スタッフ 巡礼祭ファンの間では有名

探偵:あなたが変なオッサンですか?…人ですか?

変なオッサン:人っチュウより、河童やね!

探偵:かっぱ?あの、河のわらべと書いて?

変なオッサン:そうデス~♪きみ詳しいねぇ~

依頼人:かっぱ…?

探偵:河童やがな河童!知らんのかいな

依頼人:ちょっとわかんないですね

探偵:ゲゲの鬼太郎、知らんのかいな?泉書を読め~

依頼人:はあ…すいません

依頼人がピンと来ていないので説明いたしますと、この変なオッサンは妖怪さんでした。河童です。我々は泉書名作物語世代なので良く知ってますが、今の子は知らないみたいですね。

依頼人の言っていた変な髪型…これは皿や!

そしてごっついリュック…甲羅や!

河童:シャツはアロハです~

変なオッサンと10年ぶりの再会

こちらの変なオッサンこと河童三郎(かっぱのさぶろう)さん。妖怪なのですが、雷都が気に入って30年くらい前から住みついているらしいです。

雷都の名物ガイドで、巡礼祭ファンからは有名な人だということです。

探偵:依頼人、これ、自分で調べられたよな?

依頼人:すいません・・・!

探偵:オッサン、やっちゃってください!

河童:はっけよ~い…!

依頼人には河童の相撲を体験してもらいました。皆さんも、できれば自力で調べてからご依頼くださいね。