一日一事 世界びっくりグルメ紀行「永久凍土の冷凍塩みかん」

永久凍土から流れ着く金柑の果実

毎度おなじみ孤高の美食家、メーグルマンである。

最近は世界中のあらゆる外食産業を食べつくしたとも言われるほどであるが、この世界にはまだまだ面白い食が存在する。そして新たなグルメを求めるときには、冒険が伴うものである。

今回訪れたのは北側大陸の中北部にある、凍海島だ。ここは永久に溶けることのない凍てつく大地「永久凍土」のほとりにある。

永久凍土から流れ着く、とあるきんだ…金柑の果実がここの名物らしい。その果実は、地元の人々からは「冷凍塩みかん」と呼ばれている。

昨今色々な方面で話題の森の奇族たちが好み、神聖視しているらしい。(今回の取材は事件担当のクルーに便乗したので、長々と話を聞かされたのである)

ポッケ漁に密着

島の人々は、永久凍土から流れ着く海の幸を取って暮らしている。冷凍塩みかんもその一つだという。

冷凍塩みかんに対する熱い思いを伝えたところ、漁に帯同する許可を得た。凍てつく海を渡るその漁法は、ポッケ漁と呼ばれている。グルメに至るまでの過程を長々と語るのは好きではないが、このポッケ漁の体験だけはぜひとも皆に共有したいと思う。

なぜならこのポッケ漁、なんとドラゴンと人間が協力するのだ。生き物オタクでなくとも感動ものの体験であった。

意外!ドラゴンはそんなに怒らない

漁師たちが協力を仰ぐドラゴンは、永久凍土の海底に住みついている。およそ100年前に村の人々と知り合いになり、だいたい水曜日になると漁師の所にやってくるそうだ。

漁師たちはドラゴンに鞍をつけ、船をつなぐ。

「ドラゴンに鞍をつける」とは無理難題・机上の空論の代名詞だが、このドラゴンは全く嫌がらない。漁師たちによると「ドラゴンは話の分かるヤツで、理由が無ければそんなに怒らない」らしい。

ドラゴンと人間の絆は、三度の飯より飯が好きなグルメの心にも響くものである。

漁は分業制 氷の中に大量の海の幸

ドラゴンは船をひいて永久凍土の海に入っていく。永久凍土の海は氷が張っているのだが、ドラゴンの胸の全面にある棘のようなものがバリバリと氷を割ってくれる。

そしてその氷の中に、色々な海の幸が冷凍保存されているのだ。

船のへりに陣取る漁師たちはドラゴンの進行に合わせて素早く氷を選別し、めぼしい氷を船に揚げる。船の内側に構えている漁師たちは氷を割り、中身を取り出して氷を捨てる。

氷の中からは冷凍塩みかんだけでなく、魚や獣、野菜なんかも数多く見つかる。どうして氷の中に色々な食材が入っているのかは、よくわからない。(グルメライターの私には興味のないことだ)

レンジで温めるとすぐに食べごろに

こうして獲れた冷凍塩みかんは、レンジで1分ほど温めるとすぐに食べごろになる。少しシャリ感が残った状態でいただくのが通の食べ方だ。

触感は通常の冷凍ミカンとほぼ変わらない。しかし、ほんのり塩味がついていて甘みが増している。また、一度カチコチになっているからなのか、皮も食べられる。

味だけで判断すると、正直これほどの苦労をして食べるべきものなのか疑問である。だが、グルメは単なる食事ではなく料理を体験することだ。そう考えるならば、冷凍塩みかんは間違いなく唯一無二のグルメである。