今読みたい難読論文 ソルトジンジャー(4049)『神か?魔法使いか? 真神を求めて』とは何か?
2000年前の魔学論文が話題に
学術知識は新しいほど価値があると思われがちですが、古くても真実を指摘した研究は多数存在します。その中の1つが、2000年の時を経て再評価されています。
話題の論文とは、ソルトジンジャーの『神か?魔法使いか? 真神を求めて』です。これは4049年に発表されました。基礎魔学系の論文です。
発表当時から難読論文として知られ、現在でも完璧に内容を理解しているのは世界に数名しかいないといわれています。
・始祖神の人神一致を魔法学者が考察
ソルトジンジャーは4010年代に東魔法大陸に生まれた魔法使いでした。敬虔な火の神教徒の家庭に生まれたソルトジンジャーは、幼少から魔学の天才として名をはせました。
そして10代で神庭島に留学。その時に、人化して数十年後の始祖神に謁見したといわれています。
・人と神の違いから魔法とは何かを問う
始祖神を直接見た経験から、ソルトジンジャーは生涯をかけた研究を始めます。それは、「人と神は何が違うのか?」という研究でした。
人神一致をしてもなお、始祖神には人智を超えた神的な力が宿っている。死に滅びる肉体となっただけで、神は人となったと言えるのか?そもそも神とは何なのか?
ソルトジンジャーは考証を重ね、難解な論文を次々と発表しました。
『神か?魔法使いか? 真神を求めて』は、彼の初期の論文です。神と人の違いを魔力の観点から比較し、「神とは途方もなく強い魔力を持ち、理論上死ななくなった魔法使いではないのか?」と問いました。
・当時は理解されず激しく糾弾
ソルトジンジャーがこのような問いを立てたのは、始祖神に出会った経験から「人と神の絶対的な違い」を感じたからだといわれています。
「神は魔法使いではないのか?」という問いを検証することで、始祖神を神たらしめているなにかを明らかにしようと考えたのです。
しかし当時、この論文が理解されることはありませんでした。人化して人々の前に現れた始祖神に世界は熱狂し、ソルトジンジャーの研究は無神論者の世迷言として無視されてしまいました。
それでもソルトジンジャーは研究を続け、それは次第に多くの敵を作ることとなりました。始祖神教徒や自然神派の人々の中で、彼への弾圧が激しくなっていったのです。
結局ソルトジンジャーは29歳で亡くなりました。魔法使いにとってはあり得ないほどの短命で、彼の死を嘆いた大魔導士は多かったといいます。
・現在の通説「魔法アクセス論」の下地になった名論文
ソルトジンジャーの研究は死後に評価を上げ、現在の基礎魔学の基盤となる理論へと発展しました。
「魔法アクセス論」という言葉は、魔学の基礎講座を受講したことがある方なら聞いたことがあるのではないでしょうか?この理論の大本をたどると、実はソルトジンジャーの研究に行きつくのです。
・文庫版が出版されヒット「わからなくても面白い」と話題
始祖神の降迎をきっかけに、「人と神はどう違うのだろう?」と思う機会も増えてきました。ソルトジンジャーの論文を読みたいと思う人は多く、文庫版の『神か?魔法使いか? 真神を求めて』は大ヒットを記録しています。
ほとんどの読者は内容の大部分を理解できませんが、ソルトジンジャーの文章は軽妙で「わからなくても面白い」と娯楽として楽しまれているようです。