呪い
のろい
呪いというと冬場にかかるイメージがあるだろう。しかし、文字泉の開発が進む昨今、人々は通年を通して呪いリスクにさらされている。
「呪いの専門家・解呪師 需要増なのに人手不足…その理由とは」より
呪いと病
文字ノ泉世界には、心身に不調を起こす現象を2通りに大別している。
主に科学的な原因によって引き起こされ、医学で治療可能な不調を病(やまい、あるいは病気)という。魔法学的な原因あるいは文字泉によって引き起こされ、魔法使いによる治療を必要とする不調を呪いという。
病の方は地球人にもなじみの深い、風邪やら腹痛といったもろもろの不調であるが、呪いの方はメンタルと体に様々なイレギュラーを引き起こす。
呪いの例
呪いの種類は非常に多く、生命の危機を感じるような深刻なものから、はずかしい呪い系のポンコツなものまで存在する。ここからは当方が確認した呪いの例を列挙しておこう。
- 自殺の呪い:恐ろしく危険な呪い。死の誘惑に取りつかれ自殺したくてたまらなくなってしまう。心身の苦しみをほとんど感じないところが、うつ病などの病気との違いである。
- 勇者の呪い:別名正義病。良いことをしている感覚に異常な快楽を感じ、道徳のためなら死んでもいいと思ってしまう。道徳心が高まるのはいいことなのだが、自傷行動が多くなるため危険。
- 断罪の呪い:別名断罪病。悪に対して正義の鉄槌を下さなければ気がすまなくなってしまう厄介な人になる。ス〇ッとジャパンをリアルでやりたがる人という感じ。
- 出そうで出ない呪い:くしゃみ、あくび、涙といった生理現象が出そうで出ないという、それだけの呪い。滑稽だが、かかってしまった本人は不快感に非常に苦しむ。
- 語尾ニャンの呪い:語尾が変になってしまう呪い。ただただ恥ずかしい。
- パン過激派の呪い:主食にパン以外を受け付けない体質になる呪い。煮魚と食パン、おでんにデニッシュなど違和感のある食卓に苦しむ。パンへの愛情は呪いの前後で変わらない。
呪いの治療法
病は医学的に治療するが、呪いは魔法使いが魔法学的に治療する。呪いの治療を専門に行う魔法使いたちを解呪師という。
解呪師たちは解呪院という診療所を開いているか、魔法使いと医師がどちらも常駐するタイプの総合病院に勤務している。呪われたかな?と思った際には、解呪師の診察を受け、呪いの種類を特定して解呪してもらう。
診察は問診のほか、勝手に記憶や心を読まれる読心術(こわい)を使われる。呪いを解いてもらうのだから、患者はまな板の鯉になるしかない。
現在の解呪方法の主流は2パターンあり、患者が好きな方を選べる。
体傷療法(たいしょうりょうほう)
一気に確実に治してほしい場合は、体傷療法を選択する。これは呪いの効果を物理的な怪我に置き換えてしまう治療法である。心の骨折を足の骨折に置き換えて、骨が治れば呪いも治るという理屈だ(どんな理屈だ)。
体傷療法は、処置が終わったら医学的な治療に転院する必要がある。
心理学的治療
徐々に治したい場合、痛いのは嫌だという場合は、心理学的治療を選択する。これは呪いの解き方のロジックを解呪師に解明してもらい、あとは心理カウンセラーと一緒に自力で解呪するという方法である。
やっていることはメンタルクリニックのカウンセリングと同じなので、こちらの方が拒否感は少ない。ただし、治療に時間がかかる。